
「NTTデジタルが消滅」「ウォレット事業が終了」――。 2025年後半から2026年にかけて、NTTグループのWeb3事業に関するニュースは、一見すると「敗戦」の色が濃いものばかりです。しかし、巨大資本を持つNTTが、わずか数年で数千億円の市場を完全に諦めるとは考えにくいのも事実。
この記事では、表面上の「サービス終了」の裏側に隠された、NTTドコモ・グローバルによる「構造改革の正体」に迫ります。
1. 「scramberry」終了が示したWeb3市場の厳しさ
NTTデジタルが提供していた「scramberry WALLET」の終了は、日本のWeb3市場における「B2C(一般消費者向け)」の難しさを象徴しています。
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ユーザー獲得の壁: セキュリティ意識の高い一般層に対し、暗号資産ウォレットの壁はまだ高く、ドコモ経済圏とのシナジーを生み出す前に市場が成熟しませんでした。
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コストとリスク: セキュアな管理体制を維持するためのコストに対し、直接的な収益化への道のりが遠かったことが、早期終了の判断に繋がったと推測されます。
2. 組織再編の狙い:NTTデジタルからドコモ・グローバルへ
2026年2月の吸収合併は、単なる救済措置ではなく、「戦力の再配置」です。
日本の「実証実験」から世界の「実装」へ
NTTグループは、Web3の主戦場を日本国内から欧米・アジアを中心としたグローバル市場へと完全にシフトしました。
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分散型ID(DID)の普及: 欧米で先行するデジタル身分証の社会実装に合わせ、ドコモの回線契約基盤をグローバルなデジタル認証基盤へと昇華させる狙いがあります。
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インフラ特化の強み: バリデーション(検証)やノード運営など、ブロックチェーンの「土台」となる部分で収益を上げる、通信キャリア本来のビジネスモデルへの回帰です。
3. 「6,000億円投資」の第2フェーズが始まる
市場が注目する「6,000億円」という巨額投資。これまでが「サービス開発という種まき」だったとすれば、これからは「グローバルインフラへのM&Aや技術投資」という第2フェーズに入ります。
「目に見えるアプリ」がなくなったことは失敗に見えますが、実は「目に見えないが欠かせないインフラ」を牛耳るための、より手堅い戦略に舵を切ったといえるでしょう。
まとめ:失敗と決めつけるのはまだ早い
NTTのWeb3事業は、今まさに「脱皮」の瞬間を迎えています。
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失敗の側面: 国内向けB2Cサービスとしての立ち上げ。
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進化の側面: グローバル規模でのWeb3インフラ・デジタルID事業への統合。
かつてドコモが「iモード」で国内を制したものの海外で苦戦した教訓を活かし、今回は「最初から世界標準を狙う」ために、あえて国内サービスを切り捨てたという見方もできます。NTTがWeb3の「世界のインフラ」になれるかどうか、真価を問われるのはこれからです。




